音をよく聞くということ:音楽の聴き方
私もさんざん言われたことですが、「自分の音をよく聴きながら 練習しなさい」と言われます。
「聴いてますけど・・??」と全く理解できない期間が長く続きました・・
同じような状況にある方、意外と多いのではないでしょうか・・?
今 改めて考えると、音楽経験が増えるにつれ、音について考えることが深まるにつれ、音を聴く要素がたくさんあることに気付きました。
このサイトでも、「音をよく聴いて練習しましょう」という表現が何度もありますが、これには深い意味があるのです・・
理解を深めて頂くために、より具体的にご説明したいと思います!🥰
「聴く」と「聞く」の違い
「耳で音を聴く / 聞く」という動作は変わらないのに、なぜこのような表現の違いがあるのでしょうか?
ご存じの方も多いかと思いますが、改めて整理しておきたいと思います。
- 聴く・・身を入れて聞く。 例)「名曲を聴く」「国民の声を聴く」「事情を聴く」など
- 聞く・・意識せずとも聞こえてくる。耳にする。 例)「忠告を聞く」「噂話を聞く」など
これは、英語でも同じで「聴く=listen」「聞く=hear」で区別されます。
- I enjoyed listening his music.(私は彼の音楽を聴いて楽しんだ)
- I heard someone playing the piano. (誰かがピアノを弾いている音が聞こえた)
つまり、味わい深く意識して聴くか、単なる音を耳にするか、同じ動作でもこのように表現が違ってきます。
あなたは自分の音をどのように聞いていますか?
私の経験では、余裕がない時ほど 十分に聴けていないことが多いです。
感情を込めてどのような音を出したいか、はっきり意識できると 初めて深く聴くことができるようになります。
それまでは、音は鳴ってるけど・・・(??)状態です。
良い音で弾くためには、しっかりと表現したい音をイメージすることが重要です。
そして、良い音かどうか判断する時も、しっかりそのイメージを持つことが重要です。
単なる音ではなく、心に深く響く音をイメージしながら練習しましょう!🎹
音楽家の音の聴き方
「よく聞いて練習しましょう」を より詳細に表現するなら、「音楽家の耳で聴きましょう」ということです。
言い換えると、音楽家は単に音を聴いているだけではないということです。
音そのものを聴くだけではなく、音のつなぎ目、音の処理、音色から感じるイメージ、強弱の変化、タイミング、響きなど・・音楽を作る要素も含めて聴くということです。
最終的に、これらを バランスよく融合させていくことが、演奏の醍醐味ともいえます。
しかし、練習の段階では それぞれの要素をしっかりと聴き分ける能力が必要なのです。
人間の脳は、複数のタスクを同時に行うことは とても苦手です。
そのため、最初は しっかりと意識することが重要です。
例えるなら、車の運転などでしょうか・・。
最初は安全確認をして恐る恐る走っていたのが、慣れるにつれて 高速道路でも運転できるようになったり、誰かと会話しながら 運転できるようにもなりますよね。
最初は どうしても意識的に繰り返す必要があります。
しかし、パターンに慣れてきたら、少しずつ無意識で できることが増えてきます。
そうなるまでは、意識することを意識する・・と言葉遊びのようですが、そういうことなのです・・(笑)🤯
そして、当然ながら 微細な変化にも気づけるようになるほど、演奏の質が上がります。
音楽家の耳の作り方
豊富な練習・学習経験を積むほど、 いろんな角度から 音を聴くことができるようになります。
最終的には全体のバランスを整えますが、練習の過程では 音楽の要素をいろんな形に分解しながら 聴いています。
音楽が複雑になるほど音が増え、考えることもたくさん出てきます。
その結果、「音だけに集中する」ことが難しくなってきます。
だからこそ、練習の段階で 一つ一つを分解しながら組み立てる過程が大切ということです。
これは、家の建設をするようなイメージで捉えてみましょう。
土台、柱、屋根、壁、それぞれがしっかりと役割を果たしてこそ、丈夫で安定した家が完成します。
同様にメロディ、伴奏、ベースライン、音楽進行、ハーモニー、音色・・
それぞれがしっかり役割を果たせているか、よく観察することが必要です。
言い換えれば「注意深く聴く(観察する)耳を育てる」ということです。
私の経験から言って、聴けない音は作れません。
これは 語学のリスニング能力でも 同じことが言えます。
自分ではそのまま真似して 発音しているつもりですが、よく聞くと 意識できていない些細な音は発音できていません。
しかし、リスニング能力が向上すると、次第に発音できるようになります。
これを私の音楽経験に当てはめてみても、全く同じです。
いくら良い演奏を聴いても、聴く耳が育っていなければ 同じような演奏は不可能です。
残念ですが、聴いているつもりでも「聴けていない」ということです。
それが冒頭の会話につながってくるのですね・・😔
ではどうすればいいのでしょうか?
結論として、「音楽表現力を高める」ことで 聴覚が育ちます。
表現力が高まるにつれ いろいろな音を聴けるようになるため、聴覚も自然に向上します。
強弱の幅が拡大する、響きが深まる、ペダル操作が改善する、など・・
いろいろな表現パターンを獲得することで、自然と耳が育ちます。
客観的に広く聴いたり、特定の音だけを深く聴いたり・・意識するポイントをいろいろと変えながら練習してみましょう。
表現力を高める方法
もう一つ誤解を避けたいのは、「表現=音を揺らす、変化をつけるだけではない」ということです。
安定した音で演奏することも 大切な表現であり、音楽表現の土台であるともいえます。
いきなり大げさな表現練習をしないように 気を付けてください。
基本的な身体の使い方、スピード、パワー練習なども表現に含まれていることを 忘れないようにしましょう。
むしろ、基礎練習で表現を安定させるほうが 耳が育ちやすいです。
なぜなら、音楽要素がたくさんあると 意識することが増え、音を聴く意識が薄まってしまうからです。
好きな曲だけを練習している方・・・こうなってしまう可能性が高いです。
それでも良いということであれば、決して否定はしません。
楽しさは最重要項目ですし、私もブランクの期間は 同じ状態でした・・😔
しかし、結果として いつまで経っても 自分が納得できる音を奏でることができませんでした。
(まぁ、現在も いろいろと試行錯誤中ではありますが・・💦 )
とにかく、いろいろな曲を弾けるようになりたいなら 基礎練習は本当に大切です。
一見回り道のようで、 しっかり向き合うほど 最終的には近道になります。
基礎練習が退屈・・という方も多いですが、しっかり聴けていないことが原因かもしれません。
淡々と・・ではなく、黙々と・・・意識を深めましょう。
意識を強めると、途端に聞こえていなかった音が聞こえてきます。
これは「視界に入っていたのに気づかなかった」というような感覚です。
音は目に見えないので、余計にやっかいですよね・・😨
特にピアノは音域も広く、メロディだけでなく、伴奏、和音、ペダルまで・・しかも両手で・・
ソロ演奏になれば、指揮者の役割も含め、すべて自分でまとめる必要があります。
つまり、意識するべきことがたくさんあるということです。
一度、このような視点で 基礎練習も見直してみてください。
基礎練習が楽しくなるかもしれません!🎹🎵
まとめ
絶対に覚えておくべきことは、「音を聴く能力は 全員に備わっている」ということです。
警報アラームで危険を感じたり、赤ちゃんでさえも音を聴いて微笑んだり、泣いたり・・音によって反応が変わります。
このような 「音から何かを感じる能力」は、不思議なことに 生まれながらの本能として 人間には備わっています。
そして、音楽に興味を持って このサイトをご覧になっているということは、より深く音を味わう能力があるということです。
美味しい音をたくさん味わいながら、楽しく練習しましょう🤤
そして、 さらに豊かな耳を作りましょう。
ゆっくり、じっくりと音と向き合ってみる時間、心の余裕を持つことも大切ですね。
少しでもご参考になれば 大変うれしく思います。
最後まで お読みいただき ありがとうございました!🥰🎵