脱力のススメ
ピアノの練習は、自分が聴きたい音色を探究していく作業の繰り返しです。
特に 脱力は、すべての曲を弾くときに欠かせない テクニックです。
脱力することによって、音に伸びやかなハリ・響きが生まれるようなイメージです。
「力を抜いて、リラックスして弾きましょう♪」と、あっさり言われてしまいますが、とっても難しいことです。
「しっかり打鍵しましょう。でも余分な力は抜いて・・・」(混乱しますよね・・・😣💦)
私も「こんな感じ・・・?できてるのかな・・?よく分からない・・・」という期間が長く続きました。
そして、「なんとなく 自分の音が好きになれない・・」のような気持ちも 同時にありました。
幼少期はできていたのか、よく覚えていませんが、大人になってから 余計に混乱した記憶があります。
脱力ってそんなに大切??と思っている方もいるかもしれません。
よく分からないうちは 当然のことです。
私も 理解できるようになるまでは、半分ふてくされていました・・😒
しかし、あえて強い言葉で表現すると、脱力ができないまま弾いているのは、無意味どころか逆効果です。
「頑張って弾いるのに・・ヒドイ😠💢」そう思いますよね・・・。
余計にイヤになった人もいるかもしれません・・しかし、ちょっと待って!!😣
頑張って(力んで)弾くことが、どんなに もったいないことかを再認識してもらいたいのです。
そして、もっときれいに響く音で ピアノを弾けるようになって頂きたいのです!
ここからは 少し気持ちを前向きに切り替えて、お付き合いください🙏
今回は、私の脱力が各段にレベルアップしたときのきっかけについて、ご紹介したいと思います。
「自分の音が好きになれない・・😢」、「もっと響かせたい!」と考えている方の ご参考になれば幸いです。
なぜ脱力が必要なのか
脱力が必要な理由は、音を響かせるためです。
ピアノは、「ペダルでも響かせられるじゃないか・・!」と思う方がいるかもしれませんが、ペダルは弦を解放することで 音を響かせる装置です。
「ペダル=音を響かせる」という認識は間違いないのですが、ペダルは出した音を響かせるだけです。
ペダルを使う前に良い音を作ることができなければ、良く響く豊かなサウンドを作ることはできません。
ペダル練習も大切ですが、基本的に ペダルを多用せずに練習することは さらに重要です。
この前提は、必ず覚えておきましょう。
では、脱力をするためのトレーニング方法について、具体的にお伝えしたいと思います。
具体的な練習方法
1. 指や手首の脱力を感じるトレーニング
❶肩の力が抜けているかどうかを確認する
❷ハノンやスケール練習を使って、一音しっかりと打鍵する
❸打鍵したら すぐに手(指)の力を抜いて、打鍵した反動を使って 大きく手首を上に上げる
❹手首の力が抜けて ぐにゃぐにゃしている感覚があればOK
❺肩や指も 力が抜けているかどうかを確認する
※最初はゆっくり、一音ずつ脱力の感覚を確認しながら行いましょう。
慣れてきたら 二音、三音と音の数を増やしていきます。
フレーズごとに区切り、少しずつ強さ、速さを上げていきましょう。
⚠️特に苦手なパッセージを弾くときは 力が入りやすいため、少しずつ 丁寧に行いましょう。
2. 腕や肘の脱力を感じるトレーニング
❶アルペジオや和音の連打など、少し音域が広い曲を準備する。
❷肩の力が抜けていることを確認する。
❸音を出さずに(多少鳴ってもOKです)、指だけをセットして打鍵のふりをする。
❹腕や肘、肩に無駄な力が入っていないか、自然な腕の動き(ストローク)ができているかを確認する。
❺少しずつ音を鳴らしながら、腕や肘、肩に力みがないかを確認していく。
❻上半身の自然な動きが分かったら、打鍵しながら指や手首の脱力も確認する。
❼少しずつ強くしたり、テンポを速めながら 脱力の感覚をさらに磨いていく。
(力んでしまっても すぐに元の状態戻れるように 練習する)
3. 肩の脱力を感じるトレーニング
これは 特別なトレーニングをすることよりも、普段から意識する(忘れないようにする)ことが大切です。
日常の忙しい中でも、ホッと一息ついたり リラックスする時間を持つことも トレーニングにつながります。
他の記事でもお伝えしましたが、ピアノの前だけが練習時間ではありません。
頭の中で良い音をイメージしたり、歩きながらリズムやテンポ感を感じたり、上達が早い人ほど 日常的に音楽を意識しているものです。
日常を過ごしながら 自分の体の使い方を意識をしてみると、思わぬところで余計な力が入っていることに気付きます。
その度に深呼吸をしたり、リラックスや緩める意識をすることで、脱力のトレーニングになります。
4. いろいろな演奏動画を見て、腕や肩、手首の柔軟性を観察する
とっても便利な時代になりましたよね・・・
いろんな人の演奏動画も youtubeやInstagramなどで、たくさん見ることができます。
お気に入りの演奏家や響きを見つけたら、どのように全身を使っているかも含めて 観察しましょう。
とても良い気づきや 参考になることがあります。
私の脱力トレーニングが進んだきっかけ
速いパッセージを弾くとき、身体が緊張して固くなり、どんどん弾けなくなる・・
高音をきれいに響かせたいのに、固く 強く 張り詰めたような音しか出ない・・
私はこんな時期が長く続きました。そして、頑張るほど 自分の音が聞くに堪えない音になっていきました・・
そんな私がこの状態から突破できたのは、ピアノの練習だけでなく、日常生活で 体の使い方を変えたことでした。
①全身をリラックスさせる呼吸法を使うこと
②その呼吸法を取り入れながら、全身のストレッチやヨガをする習慣を作ったこと
本格的なものではなく、気軽にほぐす程度のもので大丈夫です。🥰
しかし、この習慣を作ることで 少しずつリラックスした状態が 分かってきます。
そして、いち早く 全身や精神の緊張に気付くことができるようになります。
一日のスタートや終わりに このような時間を作って 自分を労わることも、 精神的なストレスの解放、リラックス効果が高まり、身体だけでなく、気持ちの安定にもつながりました。
まずは、力みに気付くことからのスタートです。
そのためには、意識的に力を抜く感覚を実感する ことが重要です。
忙しい人ほど、この感覚に気付くことが難しいですし、実際、 私もそうでした。
余裕のあるスケジュールを立てたり、何もしない時間を 意識的に作ったことで、身体や気持ちの力みに 気づけるようになりました。
意識するべきポイント
1.脱力している状態を理解する
ところで、脱力できている状態とはどんな状態か、理解できていますか?
たとえば、ベッドに横たわった時に 身体が沈むような状態です。
脱力が強いほど、身体がさらに沈みこむ感覚になると思います。
まずは、「脱力ができている状態」を 理解する必要があります。
常に「脱力ができているか(余分な力が入っていないか)」をチェックしましょう。
当然のことながら、余裕がない状態で 脱力はできません。
特に肩の力が抜けていることは、最重要です。
曲がスラスラ弾ける段階になるまで ひたすら片手練習を繰り返したり、初見練習を繰り返して 譜読みにも強くなることは、 大きなメリットがあります。
また、全身がリラックスできているためには、精神的な余裕があることも大切です。
忙しい日常に忙殺され続けていれば、徐々にその感覚は鈍くなってしまいます。
音楽は、緊張と緩和のバランスです。
「常に緊張」も良くないですが、「常にリラックス」も 良くありません。
メリハリをつけるようなイメージで、「弾くときはしっかり」「弾いたあとはリラックス」を意識しましょう。
2.音の響きをよく観察する
また、脱力ができている音(伸びやかに響く音)と脱力ができていない音(強い緊張でこわばった音)に気付くことも大切です。特に、速いパッセージを強い音で弾くとき、どんどん身体が緊張してしまいます。
そして、あろうことかどんどん速くなり、ますます身体がこわばり、焦りと緊張の悪循環に陥ってしまいます。
まずは、身体が脱力している状態を 意識的に観察し、その時の音の響きをよく聞きながら練習しましょう。
鳴った瞬間の音だけでなく、音の伸び(響き)も聴く耳を 普段から育てましょう。
↓↓音をよく聞く方法について、詳しい記事はこちらも ご参考にしてください!↓↓
私が恩師から頂いたアドバイス
脱力は、いろいろな表現で説明されると思いますが、私が恩師から頂いた たくさんのアドバイスが、みなさんにも参考になれば幸いです。
・弾く前は、UFOキャッチャーみたいに、指も手首もぶらぶらさせる感じ・・・
・鍵盤に触ってから弾く
・ペダルは単なる補助装置。ペダルは できるだけ使わずに、指だけで豊かに響く音を作る方が大切
・手指の緊張と手首の緊張とは無関係。(特に、オクターブなどで指を広げて和音を連打するとき)
・手首・肩は常にリラックス
・音を軽く響かせるイメージを持っておく
・「リラックスしている状態」にすぐに戻れるように練習する
・精神的な緊張があっても、身体はリラックスできるように練習する(特に本番前は重要です)
まとめ
私の考えでは、脱力にもレベルがあるように思います。
手指の筋力の向上=指の柔軟性(リラックス)が進むほど、脱力レベルが向上していくイメージです。
そのため、脱力の精度を上げたいのなら、「筋力を上げつつ、柔軟性を上げる」ことが必要です。
矛盾しているように感じるかもしれませんが、同時並行でトレーニングを重ねる必要があります。
速く複雑なパッセージを弾くときは 力が必要です。しかし、力みは不要です。
とはいえ、完全に力みをなくすことは不可能です。緊張すれば、余計に力むこともあります。
「力が入っていない(力んでいない)」状態を常に目指すのではなく、「力んでしまってもすぐに力を抜く」ことが大切です。
頑張るだけは、もう終わり。
頑張った後はさらに緩めて、「柔軟性を上げる意識」を持ちましょう!🎹🎵
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました😄
みなさんのピアノの音色が、さらに美しく響きますように・・・✨✨