シーン別練習方法:譜読みから本番前まで
ピアノの練習は、学習レベルや状況によって 段階的に仕上げていく必要があります。
同じ練習を黙々と続けることも 大切な練習ではありますが、 さらに難しい課題の達成には 時間がかかったり、いつまでも苦手部分を攻略することができません。
今回は、状況に応じた 練習方法の使い分けについて、ご説明したいと思います!
練習上手になるようなつもりで、ご自身の状況に応じて うまく使い分けてくださいね。
短時間しかない時、本番前の練習など、いろんな状況があると思います。
たくさんあるので、どれを採用するか迷うことも 多々あるかと思うのですが、少しずつお試しいただけると幸いです🥰
また、練習速度も重要です。
どの速度で練習すればよいのか(適正テンポ)については、こちらの記事をご覧ください🎹
じっくり楽譜と向き合う:完璧を目指す練習法(通常の練習)
貴重な時間を使って練習するからには、間違いがないように 注意深く取り組みましょう。
完璧な練習とは、間違いを許さずに 完璧を繰り返すことです。
すべてを完璧に行うことは不可能ですが、改善を目指す意識ではなく、毎回成功する気持ちで取り組みましょう。
なぜなら、人間の脳は「意識して7回繰り返すと 記憶として 脳に刻まれる性質がある」といわれるからです。
自分がイメージする音を思い浮かべながら、 正確さを追求しましょう。
【練習方法】
❶音楽的要素を読み取る
調性、リズム、速度、主題・モチーフ、メロディライン、ハーモニーの変化、音楽形式、全体の流れなどを 大まかに読み取り、大きな区分で区切ります。
❷自分が理想とする音をイメージして 反復練習を繰り返す
次回レッスンまでに可能な課題範囲を設定し、適正テンポを見つけましょう。
最終的に仕上げたいイメージを 具体的にすることで、練習の質が向上します。
❸間違いが起こる原因をよく考え、対処法に取り組む。
できない部分を発見したら、リズム練習や分割練習など、強化練習を行いながら、全体をバランスよく仕上げましょう。
間違える原因
・セクションが長すぎる
・速度が速すぎる
・集中できていない
・指使いが不適切 など
❹本当に納得できた時にだけ、先に進む
楽譜を見ないで演奏できる習熟度が得られ、技術や表現も 磨くことができれば次の課題に進みます。
これらの練習は、経験を積むことで 次第に精度が上がってきます。
いろいろな視点で考えながら、 練習上手になりましょう🎹🎵
苦手と向き合う:弱点発見練習法
今練習している曲のメカニックな部分で、「苦手なところ」「うまく弾けていないところ」を見つけるための練習法です。
自分の弱点を細かく発見できるため、その部分を徹底して練習すれば、短時間で効果が出ます🥰
うまく弾けない原因は 弾けない音の一音手前にあることが多いです。
なぜなら、前の音を弾く指や腕の使い方で 次の音が決まるからです。
この意識を持って 身体の動きを注意深く観察すると、原因が見つかりやすくなります。
【練習方法】
1.断片奏(分割奏)
部分練習の基本です。
弾きにくい部分を見つけたら、拍子や音数などで細かく区切りながら 練習しましょう。
(1)拍分割
音符を拍ごとに区切りながら 弾く練習。
単純な音型の曲を確認する場合に適しています。
(2)細分割
決まった音数ごとに 一音ずつずらして弾いていく練習。
拍分割をさらに細かく確認しながら 指や手、腕のスムーズな動きを確認したい場合に 適しています。
2.リズム変奏
思うように指が動かないとき、どうしても力んでしまい、余計に指が動かなくなってしまいます。
リズムのノリなどを使って、まずは軽く弾いてみることから始めましょう。
(1)リズム(音の長さ)を変える
符点のリズムなどを使い、長い音には少し指に負荷をかけます。
短い音は、次の音を弾く準備が素早くできているかを確認しましょう。
(2)アクセントの位置をずらす
弱い指には少しアクセントをつけて 指に負荷をかける練習です。
弱い指で弾くときは、どうしても 力が入ってしまいます。
打鍵後は 素早く力みをなくし、次の音にスムーズに流れることができるかまで、確認しましょう。
3.反復変奏
リズム変奏に連打や反復音を加えて、さらにシビアに弱点を見つける練習です。
まずは、リズムなしで苦手部分の反復・連打から始めましょう。
(1)反復リズム変奏
うまく弾けない音を連打して、意識を高める練習です。
例:ド レレ ミ ファファ ソ 、ドド レレ ミ ファ ソ など
(2)複音反復リズム変奏
同様に、反復の動きをつけながら、意識を高める練習です。
例:ドレ ドレ ミ ファ ソ、ド レミ レミ ファ ソ ラ など
4.両手の独立練習
ハノンの指のトレーニング、スケール、アルペジオなど、ユニゾン(左右で同じ音型を同時に演奏すること)のテキストを使って練習されることをお勧めします。
左右をずらして弾くことで、片手ずつの音を聴き分ける聴覚と、弾き分ける身体感覚が育ってきます。
(1)右先導型
右手が一音先に弾き出してから、左手も後を追うように同じフレーズを弾く練習です。
(2)左先導型
左手が一音先に弾き出してから、右手も後を追うように同じフレーズを弾く練習です。
アルペジオをずらして弾くと ハーモニーを味わうことができたり、両手では聴き取れなかった微妙なズレに気付くことができます。また、音程を感じ取るトレーニングにもなります。
5.タッチを見直す練習
(1)速いスタッカート
打鍵速度を上げても 力まずに次に備えるための練習です。
強さ・スピード・柔軟性を意識して、しっかり音が響いているか よく聴きながら練習しましょう。
(2)保持音
音を保持したまま、指の力だけで打鍵する練習です。
各指の独立・強化に適しています。
(3)スケール
順次進行で音の粒をそろえる練習です。
レガート・スタッカートでも きれいに弾けるように練習しましょう。
(4)アルペジオ
跳躍進行で音の粒をそろえる練習です。
スケール練習と同様に、レガート・スタッカートでも きれいに弾けるように練習しましょう。
自分のイメージする音が発音できているか、よく聴きながら練習しましょう。
慣れてきたら少しずつ スピードを上げますが、完成度が下がらないように注意しましょう。
身体の使い方、精神的な問題も含めて よく観察しながら、無理なく楽しむ気持ちで 少しずつ取り組みましょう🎵
効率的に(早く)譜読みをする:段階的譜読み練習法
時間がないとき、少しでも進めたいときの練習方法です。
しかし、得やすいものは失いやすいことを理解して、(なるべく早いうちに)必ず復習する前提で取り組みましょう🎵
毎日短時間でも繰り返すことで、確実なものになりますが、定期的に思い出す作業をしなければ、短期記憶で終わってしまいます・・
通常の練習では、音楽的な解釈を深めながら 全体の流れも意識して 取り組むことを 念頭に置いておきましょう。
⚠️練習曲の譜読みは この手順でも良いですが、大曲や発表会で弾く曲の練習には不向きです。
より深く表現を磨きたい場合は、通常の(じっくり向き合う)練習を参考にしてください!
【練習方法】
❶セクションを区切り、指使いを考える。
❷楽譜を見ながら 正確に(止まらずに)弾ける速さで右手を7回弾く。
❸そのセクションを 暗譜でより美しくなるように 満足できるまで弾く。
❹左手も同様に練習する。
❺左手も同様に練習する。
❻少しずつ速度を上げて 目標速度を設定し、練習を繰り返す。
❼セクションの区切りを少しずつ長くしながら、スムーズに弾けるようになるまで 繰り返す。
苦手なところ、いつも間違えるところは クセづかないように、早い段階で苦手練習に切り替えるようにしましょう。
最重要ポイントは、譜読みの段階から表現も考えることです。
なぜなら、表現や速度が変わると 指使いも変わる可能性があるからです。
ある程度弾けるようになってから 指使いを変更するのは、かなり非効率であることに加え、混乱を招くきっかけにもなってしまいます。
指使いを判断するためには 音楽経験が必要です。
特に、スケールや 練習曲の指使いが 大きなヒントになります。
なぜなら、練習曲の指使いには、滑らかな演奏のための意図が含まれているからです。
そのため、普段から 指使いにも注意して練習に取り組むことで、上達が早まります。
指使いの判断が適切にできない方は、 バイエルやチェルニー100番の指使いをもう一度見直すことも 良い学びにつながります。
なめらかに弾く:メトロノーム練習法
ある程度スムーズに弾けるようになれば、より安定した速度で 自然な表現を目指しましょう。
【練習方法】
❶セクションを区切り、指使いを考える。
なめらかでしっかり表現できる指使いを見つけましょう。
後で変更することがないように、できるだけ早い時点で指使いを見直すことが重要です。
❷間違えずに弾ける速度で弾く
速すぎず、遅すぎない速度で リズムやタイミングにも注意しましょう。
❸その速度を測定し、間違えずに弾けたら速度を+1で繰り返す
できなければ-1に戻って、弾けない原因を探しましょう。
❹全体的に音楽表現が適切かどうかも含めて 判断する
一部だけうまく弾けても仕上がりのバランスは 悪くなってしまいます。
慣れてきたら区切る長さを 大きくして、全体的なバランスも考えながら仕上げていきましょう。
❺最終的に仕上げたい速度を目標(適正テンポ)を設定する
最終的な速度目標と仕上げたいイメージを具体的に決めることで、より早く 仕上げることができます。
仕上げ・本番を間近に控えているとき:数週間先の演奏会で弾く大曲の練習法
本番で崩れないために、本番の1ヶ月前には 暗譜も含めて 仕上げておくことを目指しましょう!
【練習方法:意識的にゆっくり弾く(通常テンポの半分以下の速度で)】
❶メトロノームで、自分が曲の流れを把握できる最低速度を設定し、記録する。
❷特に難しい部分を取り出して、3回完璧に弾けたらテンポを+1
❸毎回美しくなるように弾くことを繰り返す。
❹自然な速度 / 音楽的表現のバランスが整った速度を 決定する。
さらに完成度を高めたい、頑張りたい方は、 以下の強化トレーニングも 参考にしてください。
《強化トレーニング》
・初心に戻って 片手練習を繰り返す。
・本番のつもりで弾く。
・分析的に楽譜を読む。
・友人に聴いてもらったり、録音して確認する。
本番で混乱したり、暗譜が抜けないようにすべての音に集中し、しっかり確認する練習を繰り返しましょう。
表現を追求する姿勢も大切ですが、本番前にフォームを変えることは 混乱につながることもあります。
(そのためにも、譜読みの段階から しっかり指使いを考えておきましょう。)
まとめ
工夫例をたくさんあげましたが、これらの練習は一朝一夕で 身につくものではありません。
私も いろいろな失敗や成功体験を通じて 学んできたことです。
解決策が分からず困った時、何か腑に落ちない感覚がある時、見直しのチャンスです!
ピンチの時に 思い出して、何かの参考にしていただければ幸いです🎵
現在の自分の最適解は何か・・いろいろ試しながら 学んでいきましょう!
より効率的に学ぶためには、 練習方法も工夫しながら 学ぶ姿勢が大切です。
また、自分が楽しめる練習方法を見つけるヒントにしてください!
・・とても長くなってしまいましたが、最後までお付き合い頂き ありがとうございました!😄